久しぶりに終電で帰着し、現在0時半。今朝、六時に起きて原稿を書き始めたよい子は、もう寝る時間なのですが。ついつい、おとといの「ん」につながる、「豊盃ひやおろし」の封を切ってしまったのは、今日のお芝居でグワッとハイになったから。
公演名は「無縁童女往生絵巻」。弘前に本拠地を置く「劇団夜行館」2008年後期公演です。お芝居事情に無知な私には、アングラ劇団と言われた「紅テント」や、暗黒舞踏と共通するものがあるように感じられました。
白塗りの役者さんたちが、和服をアレンジした衣装をつけ、哄笑したり、狂笑したり。時代設定もキャラ設定もストーリーも理解できず、観念のカオスが、ひたすら熱っぽく進行していくというお芝居です。
もし、これをホールや会館で観たら、またちがったでしょう。しかし、ここは亀有の「香取神社」。駅前の交番で道順を聞き、向かったときに、すでに驚きました。「この巨木に囲まれた一角は何?」
亀有駅周辺には、「両さん」の銅像もありますが、ベッドタウンとして、巨大マンションや巨大ショッピングセンターが立ち並ぶ、新興衛星都市風。そこに鎮座まします香取神社は、そもそも「異界」の風を発信しています。参道から本殿に続く階段には、灯篭がズラリと並んでいます。何かが始まりそうな、緊張感と期待感に満ちた空間です。
お芝居が始まると。明らかに闘いでした! 生活観のあふれる街の一角に、突如出現した異次元世界。シャバと冥土の綱引きです。
お芝居が進み、観客は心を奪われる。でも、街の明かりや騒音は、容赦なく襲ってきます。異次元世界の裂け目を押しつぶすかのように、神社前の歩道で世間話を繰り広げる主婦ご一行様、派手な爆音を立てるバイク、クルマのライト。
役者さんたちのパワーがふと薄まると、近隣のマンションが発する明かりが、白々と私たちも現実に引き戻す。信号待ちをするクルマのエンジン音は、あるときはセリフの邪魔に、だけど役者さんのパワーが勝てばBGMに。
ベッドタウンの生活感が勝つのか、お芝居が勝つのか。象徴的だったのは、客席からみて「本殿の脇」、主舞台の左側の背景に位置するアパートの、窓の明かりでした。
その窓の明かりは、境内のあちこちに置かれた灯篭の一つに見えることもあれば、この異次元世界を押しつぶす、「日常生活」の橋頭堡に見えることもあり。
クライマックスは、二本の巨木に張り渡されたロープ、地上十数メートルで行われる舞踏。一昨日の前夜祭で、言葉を交わした舞踏家様が、静かで熱い身体表現を、しばし。
拝見しながら、このお芝居から受けた衝撃を、言葉で表現できたことに、深い安堵感をおぼえておりました。やっぱり私は物書きなんだなあ。自分の言葉でつかんで、やっと安心するんだなあ。
心の底から満足して、家路につこうと思ったのですが。身体が冷え切っている! ガタガタ! というわけで、亀有駅前にて、暖まってから帰宅の途についたのでございました。

10月 12, 2008 文化・芸術 | Permalink
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