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2008年10月17日 (金):アウトサイダー・アート

言葉の出所は、光文社新書『アウトサイダー・アート~現代美術が忘れた「芸術」~』服部正さんの著作によります。袖の見返しの解説が的確なので、引用させていただきます。
[アウトサイダー・アートとは、精神病患者や幻視家など、正規の美術教育を受けていない独学自修の作り手たちによる作品を指す]

日本では、版画家の山下清さんが、まず思い浮かびますね。同書の袖の引用を続けましょう。
[20世紀初頭にヨーロッパの精神科医たちによって『発見』されたこの芸術は、パウル・クレー、マックス・エルンスト等の前衛芸術家たちにも多大な影響を与えた。戦後には、フランスの画家ジャン・デビュッフェがヨーロッパ各地から作品を収集し、それを『アール・ブリュット(生の芸術)』と呼んで賞賛したことから『価値』が高まった]

デビュッフェと聞くと、私はボージョレーヌーボーのブランド「ジョルジュ デビュッフェ」を思い出しますし、「ブリュット」もまた、泡ワインを愛飲していると、よく出合う言葉。と思っていたら、画家のデビュッフェさんは、ワインの一族の連枝だそうです。

ともあれ、この「アウトサイダー・アート」。図版満載の光文社新書も保存版ですが、同時に、私の身の回りのモロモロに、光を投げ与えてくれました。
今、私がいただいている日本酒は「龍勢の特詰吟造り純米中取り秋の蔵出し」という、長い名前です。蔵元様、取次ぎの酒店様との連携で、やっと手に入れた一本。冷蔵庫内の温度→冷や(室温)→ぬる燗→やや熱燗→冷や(室温)の今、思うこと。この酒器も、アウトサイダー・アートでないかい?200810051927000

これは網走刑務所に収監されている人たちが作り、法務省内の売店で売られているぐい飲みです。入手までの経緯は10月5日の日記を参照していただくとして。
ひとつ百円だったぐい飲みが、わが酒器コレクションの中で、燐光のような存在感を示しています。今、手にしているぐい飲みには、スタンプで押したような桜模様が散っています。桜模様の型枠を押し付けながら、彼は、何を、どう思ったのか。今、私の手元に届き、「龍勢の特詰吟造り純米中取り秋の蔵出し」が満たされていると知ったら、どう感じるか。このぐい飲みに押し付けた指の跡を残している彼は、今、娑婆にいるのか、それとも収監中か。出所したのなら、満期か、保護観察期間を残してか。そもそも、なぜ、網走に足跡をしるす次第となったのか。

こうしたドラマを生み出すのが「アウトサイダー・アート」なのでしょう。それと対極にいるアーティストが「サルバドール・ダリ」ではないでしょうか。シュールレアリズム界の巨匠として不動の地位を築き、レプリカや美術展での収入だけでも、とんでもない商業的成功を収めたダリ。
彼の衝撃的な伝記が刊行されています。タイトルは『贋作王ダリ』、著者はダリの専門美術商&詐欺師だった巣タン・ラウリンセス。翻訳は、陸上競技界が誇る偉大なる翻訳者、楡井浩一さん。美術にご興味のある方なら、読めばハラハラドキドキワクワク、時間を忘れること請け合いです。

さて、次はどの盃を選ぶか?ステキなアーティストに「私に合う酒器を作ってよ」とオーダーできる日々が待ち遠しゅうございます。


10月 17, 2008 文化・芸術 |

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