どうせまた、来るんだから。そんなにあわてなくてもいいのに。帰ればいろんなことが待っているのだから、今朝ぐらいはゆっくり休めばいいのに。
理性はそう告げるけれど、四時半に目が覚めてしまったんだから、仕方がない。相棒はぐっすり夢の中(ゆうべは私のほうが早く寝た)。
しばし枕上にて、思索にふける。
「どこから来た?」
「どこへ行く?」
中上健次さんの『紀州根の国』にある格調高き原文を書き記したいところですが、ここは台湾、勘弁していただきましょう。ともあれ。やっと五時半。もう寝てはいられない。
こんなとき、広いお部屋は便利です。ごそごそと起き出して、ビジネスホテル二部屋分ぐらいはあるバスルームへ。次は厠上にて、本日のルートを決定。
着替えて、ランニングシューズをはいて、でもまだ外は暗い。枕上で思いついちゃった、書きかけ原稿の続きのメモをとる。さあ六時半、そろそろよいでしょう。明るくなりかけた台北の街に「しばしサヨナラ」のランニング。今日もまた、市場めぐりの旅。
途中までの道は、もうおなじみ。頭をからっぽにして、走りを楽しむ。が、さすがに昨日は走りすぎ、歩きすぎ。ウォーキングモードに切り替えよう。トロット、トロットで歩く。膝という栗毛の馬に乗って進む私。馬上での思索は、えーと、秘密。ゆうべのガールズ・トークの続きだからね。
まずは「228和平公園」へ。お約束の、太極拳グループがいらっしゃいます。運動を終えてくつろいでるおじいちゃま、おばあちゃまに、カメラのシャッターを押していただきました。
お次は天后宮。道教の廟です。何人もの信者が、お祈りを捧げている。お線香を買い、見よう見まねで祈りを捧げます。思うことはただ一つ。
「今、ここに、私がこうして存在していること。それが最大の喜びです。ありがとうございます」
本堂を出て、ふと見れば、弘法大師の像。近くにあった弘法寺のものを引き継いだそうです。手を合わせずにはいられません。それから市場めぐり~~のはずが、閉まっている店が多い。そうか今日は土曜日だ。仕方がないね。ふらふら歩いて、さらに歩いて、市場の一つで朝食。そろそろ時間切れだから、ホテルに帰りましょう。
お風呂に入り、着替えて、荷造りを済ませ。まだ30分あるぞと外に出る。お焼き風の肉まんと、なぞのスープ。お菓子だと思って頼んだら、いきなり茹でられ、スープが出来上がり、カップに詰めて「はい!」と渡されちゃったの。
チェックアウトのとき、フロントのかわいらしい女性服務員が「日本語を教えてください」。ほぼ流暢な日本語なれど、いまひとつ、隔靴掻痒が残る感じの彼女がいわく「カードのことで、お客様に怒られるのです。どう説明すればいいのでしょうか」。つまりクレジット会社から承認がとれなくて、カード番号の確認などを電話で行なおうとすると、「なぜだ!」と怒り出す日本人がいるそうで。
私は悪くないのに、怒られちゃって、待ってもらうのが大変なの。私が言っているんじゃなくて、カードの会社の人が言っているんだと、どうすればわかってもらえますか?
そう訴える彼女に、わが同行嬢の考え出した文案は「カード会社が確認を求めています」。う…うまい。うますぎる。十万石だ。
ひそやかな波乱万丈を経て、出国手続きをすませました。さあ、ここからは「最後に残った現地通貨を吐き出せ」とばかりに、最後の買い物天国が待っている。しかし諸般の事情により、手持ちの現金はごくわずか。
厳選して買ったもの①携帯用お猪口セット。本当は茶器。



故宮博物館をはじめ、嬉しい宿題を残してきたなあと思いつつ、搭乗口へ。しかしまだ、ドラマは終わらない。丸の内で牛めぐりをしたアート・イベント「カウ・パレード」の台湾版が、ここに。各地の小学校の合作です。


搭乗してからも、まだまだ続く。窓際に座る私の周囲10人は、日光から来た熟年カップルの団体です。皆さん、仲良く、にぎやか。お菓子が、私にも、当然のようにまわってくる。旅の最後に、嬉しい、おもてなし。
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